平成19年(90周年記念)「会員総会」に参加して
講 師 : 中西 寛氏(62回/京都大学公共政策大学院教授)
演 題 : 「岐路に立つ世界と日本の生き残り戦略」
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文責:江嵜健一郎(38回)
母校90周年記念同窓会で、京都大学公共政策大学院教授の中西寛氏の講演を聞いた。
タイトルは「岐路に立つ世界と日本の生き残り戦略」で、質問をいれて1時間強の時間、世界の現状を踏まえて、日本の将来、特に日本がいかようにして世界の中で、存在感を発揮していくべきかについて、分り易く、示唆に富む充実の講演を堪能した。
世界は今、混沌としている。短期的にみてだが、世界のなかでリーダーとなる存在がないことから来ている。日本はある程度の距離を持って、グローバル化する、世界の中で付き合っていくことだろうと指摘した。
日本人は、修養して学ぶということを忘れてしまった。日本の子供は悪くない。ただ、これからは、いい学校に入れるということだけでは生き残れない。日本人は、黙って勉強するが、うまく世界にアッピールすることが苦手だ。それは自分自身も含めてだが、大人が自己修練しているかと言うとそうではない。米国人にしても中国人にしても、それが自然に出来る。その点では、日本人は、外国人の知恵を借りる必要があるとの指摘が特に印象に残った。
話題の憲法問題については、多少あわてて作った面がある。ただ、戦争をしないと憲法に書くのはいいと明快に述べた。
日本が、資源問題でも、日本なりに、存在感を発揮できるのは、水の問題だろう。海洋にも恵まれていることも大きい。水と食糧の安全問題について、日本がリーダーシップを発揮できる。来年日本で開催される洞爺サミットでも、安全がキーワードになるだろう。その方向で準備が進められていると話した。
日本は、人口減少時代に入ったが、移民を増やすといったことなど発想の転換が必要だろうと指摘した。
日本が世界の中で影響力を発揮していくためには、PKO,NGO開発支援をもっとやっていかぬとアッピール力が悪くなると指摘した。
20年以内に朝鮮半島が統一されるだろうと大胆に予測した。ただ、中国の将来については、いろいろな選択肢があり、正直わからないと率直だった。
日本の政治家が、勉強もしないで、ぽろっと喋ることが多いが、学者の書いた本をたまには読んで勉強してほしいと、「絆創膏」を引用しながら、これでは世界に伍していけないとユーモアたっぷりに話した。
最後に3人が質問した。冒頭、食糧の安全保障の問題について質した。国益に30~40%、市場原理に60~70%と、両張りで行くのがいいだろうと答えた。
同窓会は、あと、元宝塚歌劇団星組、同窓生の母堂、桐生のぼるさんの歌あり、チームのダンスあり、また、同窓生,竹田昌弘氏の声量溢れる迫力満点のテノールを満喫した。
10年先、20年先の世界は果たしてどのようになっているのだろうか。命ばかりは神のみぞ知る世界であるが、100周年同窓会を、健康に留意して、見届けたいとの思いを改めて強く持った次第である。(了)
掲載にあたっては、中西教授から転載の許諾を得ましたことを申し添えます。
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