母校甲陽学院同窓会総会が8月28日、午前11時からノボテル 甲子園、一階「鳴尾間」で開かれ、第一部のゲストとして迎えた 59回生、東京大学大学院医学系研究科、岩坪威(いわつぼたけし) 教授のテーマ「アルツハイマー 目前に迫った予防と治療」の講演を 熱心に聞く会場の様子をスケッチした。
総合司会は恒例により、NHK現役アナウンサー、69回生、真下貴 氏が担当した。はじめ東日本大震災犠牲者と同窓生物故者に黙とう、 31回生、同窓会有田会長挨拶、来賓代表、甲陽学院山下正昭校長挨拶 のあと講演は始まった。
テーマがアルツハイマー病についてだったせいか、ここ数年と比べると 参加者はかなり多かった。プロジェクタ―をふんだんに使い、マンガも 時に入れ噛み砕いて説明を試みられたが、さすがに専門知識がないと そう簡単に頭に入る代物ではない。途中から櫓を漕ぐ方も散見された。
大脳を輪切りにして健康な脳と陥没個所がはっきり現れたアルツハイマ ー脳が画面に映し出された時は、おおっというどよめきが聞こえた。 大いに説得力があった。
「アルツハイマー病(AD)脳で老人斑を形成するべ―タ―アミロイドは 40あるいは42個のアミノ酸からなるAべ―タ―ペプチドから構成さ れる。42型は40型より凝集し易く、アルツハイマー発症に重要な役割 を果たす。」と聞いても正直ピンと来なかった。しかし、アルツハイマー 脳には「老人斑」が出ると聞いた時は不気味な感じがしたことを白状する。
岩坪威先生は、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドべ―タ―を つくる酵素「ガンマ―セクレターゼ」の働きを解明、アルツハイマー治 療法の研究に道を開いたことで「メトライフ医学研究賞」を09年2月 に受賞、アルツハイマー病研究の第一人者で、大変な先生であることを 恥ずかしながらはじめて知った次第である。
講演の最後に「アルツハイマー予防のためにどうすればいいか」という 話しになった。「それが聞きたかったのだ」という空気が会場に流れた。 第一に糖尿病、高血圧、高脂肪血しょうは避けたい。第二に適度な運動 を続ける。第3には頭部打撲は努めて避けることとの説明を聞いていて アルツハイマー病は誰にでもかかる病気だなと妙に納得した。
痴呆症と診断された初期の段階で何か普段と著しく違う言動がある時は 注意したほうがいいと言われた。かかりつけの医者もしくは専門医 に出来るだけ早い時期に相談することを勧めるとアドバイスされた。 「今日のように同窓会に出て来られるような人は大丈夫です」と言はれ た。人と人との対話を楽しむことはアルツハイマー病に限らず健康の 秘訣なのだろう。
第二部は2階の「甲陽の間」へ会場を移した。あしなが育英会への 義捐金送呈のあと69回生、東北大学大学院、長谷川隆文助教授、 病棟長から被災地での生々しい治療現場の話を聞いた。古澤流地 唄舞、山本亜希子さんの舞いが花を添えた。45回生、同窓会副 会長、西村貞氏の中締め挨拶のあと会場を後にした。(了)