平成27年度甲陽学院同窓会会員総会が8月29日、午後1時からノボテル甲子園ホテルで開催され、西村貞一、同窓会会長挨拶、山下正昭、甲陽学院中学、高校長による母校近況報告のあと、弁護士、野口善国氏(46回生)の「気づいていますか 子どものSOS」と題する講演会が行われた。

会場の様子を恒例によりスケッチした。

野口弁護士は、平成9年(1997)、神戸市須磨区で起こった連続児童殺害事件の加害者少年Aの付き添い弁護士を担当した。加害者の少年に初めて会った時、「小さな子だなあ」と思った。素直で、言葉遣いも丁寧だった。あんな大事件を起こした子供に動揺がまるでない。問いかけると「いや、別に」と、繰り返した。うれしいとか、いやだなーとか、表情に見せない。30回以上会った。心の外に壁をつくっていた」と話した。

講演は「歌を忘れたカナリアの歌詞は「非行少年」と呼ばれる子どもたちの気持ちを表現しています、と野口さんは,会場でメロディーをつけて口ずさんだ。数々の重大事件の少年たちは「愛された感じを持てなかった子どもたち」ではなかろうかと話を進めた。

それなのに人々は子どもたちに厳罰を望む。非行はおどろおどろしく報道される。なぜ少年がその非行を犯したのかについては小さく報道される。少年たちがどのように立ち直ったかは報道されないと、ここで、野口さんは力を込めた。

少年とどのように接しているか、ご紹介します。子どもの発達、立ち直りの段階に応じて援助しています。「低いところからはじめます」。まず家に行ってみます。家でその子がどんな気持ちで毎日すごしているかを想像してみます。親の暮らしぶりはどうかなあ。皆で一緒に食事をします。

「教育とは、今日行くこと」とは、あるベテラン教師の言葉です。子どもたちは「そばにいてくれるだけでよい」といいます。どうしてもいけないときは、電話だけして、云いたいことを全て聞いてあげるようにしています。「子どには今日しかない」とコルチャックは言っていますと野口さんは力を入れた。

「自分自身に自信を持てない」「自己評価が極めて低い」子どもが多い。ある少女が「先生の背中、温かいなあ」といった。親にだっこしてもらったことがないと話した。抱きしめてやりたいと思ったが、弁護士のおじさんが、そんなことをしたら、セクハラですからねと、野口さんは会場の笑いを誘った。

スマホの一言がメチヤクチャショックなのです。バーチャルな世界の方をリアルにとる。自殺の背景にスマホの存在が大きい。いじめに関連して、お前は虫だ、と名指しされた子どもの机の上にある日、虫が置かれていた。その子はそのあと自殺した。

いじめのない学校づくりにお手伝いしている。いじめはどこでも起こりうる。しかし、発見は難しい。どこまでも被害者を守る意識で、全校一丸となっていじめに対応してほしい。日本の社会全体がいじめの構造になっていますと言って講演を終えられた。

その日所用があり、講演のあと「これから質疑応答」という司会者を振り切って会場を後にした。一人でも多くの人に聞いて欲しい、素晴らしい講演会を用意いただいた同窓会事務局の方に感謝申し上げる次第である。 (了)